「その人の部屋には…?」

「入れないわ…彼が拒絶してるもの」

「でも…キミのことを愛してるんじゃないの…?」

「さぁ…どうかしら…でも、それなら…その手を伸ばして…私を手折って欲しいのに…」


自分は、道端に咲く花だ、と…彼女は小さく囁いた。

彼は、見守っていたいから、傍には居させない。
何度も何度も、その手を伸ばしかけては、小さな自分の自由を奪うことが怖くて、途中で止めてしまう、からと。


「大事な人、なんだね…」


「えぇ…私の命を分けてあげたいくらいに…いいえ。この命をそのまま捧げてしまいたいくらいに、よ」


彼女は、凛と背筋を伸ばして、バレエのように体をしならせた。