もしも、キミの願いが叶えられないような現実が、待っていたとしても…ボクが此処に戻ってくるまでは、絶望に負けずに待っていて欲しいと。
どうか、その命を…その想いを…深淵に投げ出すことなく、いて欲しいと…。
こくり…。
彼女が頷いたのを、きちんと確認してから、ボクはさっき別れを告げたばかりの施設へと足を運んだ。
この、海沿いの場所から、あの施設までの距離は長い。
ボクは、いつも彼にどうしたら顔を覚えて貰えるのか、どうしたら、ボクという存在を覚えていて貰えるのか、そればかりを考えながら、俯いてこの施設まで通じる道を歩んできた。
それだからか、普通に前を向いていれば、見付けていただろう彼女の姿にも、きっと気づかなかったんだ…。
もっと、早く。
もっと、早く、彼女に出会えることが出来ていたら…。
そう思って、少しだけ歩みを止めて空を仰いだ。



