「私には、知る術がないの…彼が今どうしているのか…どれくらい、彼の体を病魔が蝕んでいるのか……そして…彼の余命が何時頃なのか…」


彼女は声を震わす。


それでも、体を休めることをしない。
それは切実な願いの現れだった。


「どうか、あの人の近くにさせて欲しい……私を見ていて欲しい…。もう、こんな自由なんて摘み取ってしまえばいい…。あの人の居ない世界では、息さえも出来ないのだから…」


ボクは、ちらり、と先程彼女が指さした部屋を眺めた。

あの…最上階の…あの部屋は確か…。


父親への訪問で、施設内のことは粗方分かっている。

だから、ボクは、心に滲みるような踊りを見せてもらったお礼だと言って、あの部屋の…その、彼女が大切にしている人の、様子を見てきてあげようと言った。


ただ、…一つだけ。
一つだけ、約束をしようと、語り掛けた。