「どこへ行くんですか」
「そんなもん、お前が知る必要ねぇよ」
後ろを振り返れば、屯所はもう豆くらいちいさくなっていた。
今まで黙っていたけど、さすがに男にそう問いかけた。
だけど何も教えてくれなくて、結局どこに行くのか分からない。
男は何かから逃げるように早歩きで進んでいるから、腕を掴まれているあたしも同じような状態。
しかも歩調が全くと言っていいほど合わなくて、半ば引きずられる形になっていた。
「あなたは誰ですか」
「新選組とどのような関係なんですか」
何を問いかけてみても、男は黙ったままだった。
困ったな……
巡察の人たちが戻ったとき、あたしが屯所にいなきゃまずいのに。
「あなたは……」
「おい薬箱」
顔に男の背中がぶつかった。
男が急に足を止めたからだ。
物凄い剣幕であたしを振り返る。
「その五月蝿い口、縫い付けてやろうか。お前はただ、俺たちに使われるだけでいい」
黙ってついてこい、と男は再びあたしの手を引いて歩き出した。
正確には腕を掴んで。
……薬箱なんて呼ばれるの、久しぶりだな。



