縁側から見える庭では、黒猫が一匹で遊んでいた。
風にゆらゆら揺れる草を、必死に前足で追いかけている。
あたしはいつものように縁側に腰かけ、その様子を眺める。
だけど頭の中では、さきほどの藤堂さんの言葉でいっぱいだった。
みんな心配している?
それは大事な薬箱が壊れちゃいけないから?
使い物にならなくなったらいけないから?
……もし、
もしもあたしが壊れちゃったら……
もう、捨てられちゃうのかな。
なんてよからぬ事を考えてしまう自分がいる。
そこまで考えたとき、あたしはふと思った。
「あたし、ここの人たちに捨てられちゃうのがよくないことだって思ってる……」
彼らに好かれているわけじゃないのに、むしろ嫌われているのに。
あたしはここを、少しだけ居心地がいいと感じてしまっている。
「……迷惑かな」
庭で遊んでいた猫が、ふいに顔を上げた。
その視線は、あたしの後ろ……
「全然迷惑じゃないぜ?
来い。俺たちが使ってやる」
あたしの後ろに立っていたのは、
腕を強く掴んだのは、
知らない男の人だった。



