「暗くてよく見えないんだけど、もしかしてどこか怪我してる?」


「足を折ってしまって、歩くことができないんです。お礼はします。どうか家まで肩を貸してください」


足が折れてるって言ったらぎょっとしてたな。


そりゃそうだ、もう夜も近いのにこんなところで足折れてる娘が一人でいたら誰だって驚く。


そして送ってくれることになった。



「で、家どこ?」


「あっちです」


はいはい、とため息混じりの返事をした彼は、軽々とあたしを抱っこした。



「あの、肩を貸してくれるだけでいいのですが」


「どうせ肩貸したって歩けないでしょ。ほら、落ちないように手ぇ回しなよ」



手を回す……どこにだろう。



男はあたしの背中と膝の裏に腕をやり、支えてくれている。



「肩だよ肩。肩に手を回して」


「わかりました」


まったく、と無知なあたしに呆れる男は自分の肩に手が回ったのを確認すると、長屋を出た。