傷だらけの君は



「うん、だいぶようなってきた」


数日後。あれほど苦しかったのがまるで嘘のように、あたしの熱はほとんど引いていた。



「辛かったやろ、ごめんな」


「いえ」


山崎さんがあたしの額から手を離して例にならって頭を下げようとするから、それを阻止する。



「アンタ意外に力強いな」


お互いに譲らなくてちょっとした格闘のすえ、山崎さんが吹き出すように笑った。


山崎さんはあたしが仕事で新選組を訪れたとき、入口で待っていてくれた人だった。


たしかそのときも笑顔だった記憶があるから、たぶんよく笑う人なんだろう。



その屈託のない笑顔を眺めていると、障子が音を立てて開いた。



「山崎くんどう?」


「熱はほぼ下がったみたいや。いや〜永倉さんもだいぶ辛かったんとちゃう?」


「永倉さんはどうでもいいよ。馬鹿だし」


入ってきたのは沖田さんだった。


熱を出していた人は、永倉という名前なんだ。

……馬鹿なんだ。



呆れた顔をして部屋に入ってきた沖田さんは、そのまま山崎さんの隣に座った。



沖田さんは今もなお、頻繁に部屋に来てくれる。


そして総司さんが沖田という姓だと知り、あたしは沖田さんと呼ぶようになった。