『それ、治るまでここに居なよ』
数日前。仕事をこなして帰ろうとしたあたしを引き留めたのも、この人だった。
思った以上に熱が高くて今にも倒れそうだったけど、なんとか気を張って保っていた。
腕もずきずき痛むし、全身がなまりのように重かった。
はやく帰って休みたいな。
……お金取らなかったのはまずかったかな。
お父様にはなんて説明しよう……やっぱり最初の人の分だけでも貰うべきか。
声をかけられたとき、あたしはそんなことをぐだぐだと考えていて。
そうやって気にかけられたのは初めてだったから、すこし驚いた。
だけど家に帰らないと父様が心配する。
あたしは大丈夫です、と返した。
……返したけど、
そこからの記憶がない。
そして昨日、目覚めた。
どうやら三日間ほど眠っていたらしく、起きたら腕の骨折は治っていた。
だけどしぶといことに熱はまだ上がりっぱなしで。
ここの人たちに看病してもらう日が、続いていた。