涙をぬぐえば、世界が開けて見えた。
そこには土方さんが、斎藤さんが、原田さんが、永倉さんが……
そしてとなりには沖田さんが。
みんな、あたしの世界にいれくれた。
一人じゃない、あたしはもう独りじゃないんだ。
「お母さん」
なんて言おうかなんて、考えてなかった。
考えるよりも先に言葉が出ていたから。
「あたし、お母さんに会えてよかった」
ストン。
ずっと引っかかっていた何かが退いたかのように、自然と言葉が出てくる。
「許すもなにも、あたし、怒ってないよ。お母さん」
だって、
「いまこうして話せてるのは、貴女があたしを治してくれていたからでしょう?」
お父さんに暴力を振るわれていたあたしが、なぜ死ななかったのか。
そんなの一つしかない。
「あたしの分まで、移してくれたから……いま、あたしは生きてるんだよ」
謝って欲しくなかった。
今まで苦しんできたお母さんに、これ以上苦しんで欲しくなかった。
「ありがとう。あたしを生んでくれて、守ってくれて……ありがとう、お母さん」



