「瑠璃さん」
すっと、あたしの耳に入ってきたのは何の迷いもない声で。
こもった空気の中で、さあっと風が通り抜けるかのように。
「紅が欲しいのは、そんな言葉じゃないですよ」
……いつだってあなたは、あたし以上に
あたしのことを真剣に考えてくれた。
重なった手の力は緩まることなく、いつまでもあたしを温めてくれる。
「この子は優しい子です。きっとあなたの謝罪も必要としていません」
そして目が合った沖田さんは優しく笑っていたから、あたしは自分の間違いに気付くことができた。
この人は……ここの人たちはあたしを迎え入れてくれたのに。
目が合うといつも、
いつも……笑顔を向けてくれていたじゃない。
「紅の気持ちを無視しないであげてください。
この子の心の声に、どうか耳を傾けてあげてください」
沖田さんはあたしの手を離した。
そしてその手を、背中に添えられて。
きっと合図だ。きっかけを沖田さんが作ってくれた。



