土方さんの手が、お母さんから離れた。
崩れ落ちるようにして畳に手をついたお母さんの目からは、ぽたぽたと涙がこぼれ落ちて。
「これ以上この子と一緒にいたら、私までこの子に……紅に何をするか分からない。だから、だから私は紅を……！」
今まで合わなかった目がこのときようやく合った。
なのに、なんでそんな顔してるの？
みんなそうだった。
やっとあたしを見てくれた、そう思ったとき向けられているのは
いつも……笑顔なんかじゃなかった。
あの人も、お母さんも、みんな。
「……そんな顔しないでよ」
何で笑ってくれないの。
「紅、ごめんね……ごめんなさい」
謝ってくれなくていい、そんなものあたしは望んでない……
「笑ってよ、お母さん。泣かないで」
あたしはただ笑顔でいてほしいだけでいいのに、それだけで十分なのに。
「お母さんを、許して……」
なんで分かってくれないの。
目の前で泣き崩れるお母さんに、
あたしの目からも涙がこぼれ落ちた。
