腕の傷も痛かったけど、それ以上に胸が今までにないくらいズキズキと痛んで。
あたしはこの一言を言ってもいいのか。
もしこの人にとって、忘れたい過去の話であるとしたら。
だとしてもあたしにとっては過去の話なんかじゃなくて。
あの人に本当の親じゃないって言われた日からずっと、考えなかった日なんてなかった。
「お母さん……」
その涙は、どっちの涙なの。
あたし、知りたいことがいっぱいあるんだよ。
泣いてなんかないで、教えてよ。
「紅……?」
もう一度名前を呼ばれる。
紅、って。
だけど二度目のそれは、あたしの後ろから聞こえた。
「……誰?」
そこにいたのは、団子を食べながらあたしたちを見ていたのは。
あの日以来初めての、沖田さんだった。



