席に案内されて、出てきたお団子もいつもの味で。



「はい、三色団子!紅ちゃん本当この味好きだよねぇ」


「えへへ……いただきます」



団子を食べながら、ふと思った。


そういえばなんで三色団子が好きになったんだったっけ。


いつからか、団子を食べるってなったときはこの味ばかり目が行くようになった。


うーん……


「美味しいから、まぁいっか」


「ふふ」


雪さんがあたしの顔を見て笑っていた。


なにか付いてるのかな、なんて口周りに手をやる。



「あたしにも娘がいたら……紅ちゃんみたいにいい子に育ってくれたかな」


「……雪さん」


笑っているけど、瞳の奥には隠しきれない哀しさが滲んでいた。



その哀しさの原因をあたしは知っている。


雪さんのおなかの中には赤ちゃんがいた。


……だけどそのおなかの子が、雪さんと顔を合わせることはなかった。


「流産だったのよ」


そして旦那は、その事が分かると雪さんの前から姿を消した。


なんであたしにそのことを話してくれたのか、そのときのあたしは考えさえしなかった。


まだこのお店を知ったばかりで、雪さんとも数回しか話したことなくて。


それなのに雪さんは団子を食べるあたしの隣で、ぽつりぽつりと話してくれた。




「……あたしも親の顔を知らないんです」


あたしはあの人に拾われる前、誰の腕で抱かれていたんだろう。


お父さんは、お母さんはどんな人だったんだろう。



……この力はいったい、何なんだろう。



「あたしも、雪さんみたいな人がお母さんだったらいいな」


「紅ちゃん……ありがとう」


その笑顔につられてあたしも笑う。



ここのお団子はいつも美味しいけど、今日は特別に甘く感じた。