「分かりました」



彼女は手を伸ばした。


もちろん、むせび泣く近藤さんの頭を撫でて慰めるわけではない。


その手は近藤さんを通りすぎ、苦しそうに呻く永倉さんの胸元に置かれた。



一瞬の出来事だった。


何かがあったわけでもなかった。




「うおっ!?」


彼女に手をかざされてから数秒後、そんな素っ頓狂な声をあげたのは永倉さんだった。