「あの何か?」
「え」
彼女がちらりと僕を一瞥した。
まさか僕のことを覚えてないの?
いやたしかに暗かったけどさ。
自分も覚えていたのだから相手も覚えているだろう、そう思ってた自分がなんだかすこし恥ずかしかった。
「総司、知り合いだったのか?」
一くんの言葉にあの日のことを説明しようと思ったが、もしかしたら彼女にとって忘れたい出来事なのかもしれないという考えが頭に浮かんだ。
それなら別に、わざわざ言う必要はないか。
「いや……」
結局、濁すように答えてしまう。
彼女もなにも言わなかった。
「それで、治すのはこの方ですか?」
彼女は僕から目を離すと、床に伏せている永倉さんに目を移した。
「ああ、数日前からずっと熱が下がらくてね……このままじゃあ彼は、新八はぁぁああ……!」



