「痛い、ですよね。......辛いですよね。あたしにも、分かります」


過去、同じような状況の人を治したことがあった。むしろこの人よりも酷かったかもしれない。


治したからと言って拷問が終わったわけじゃないけど、ほんの少し気が紛れたんだろう。


その人からの依頼は二度となかったから、その後どうなったかはわからない。



「......待て、俺はお前を知っている......ああ、そうだお前......薬箱の娘だな」


嬉しそうに笑った男の人は、しっかりと私の姿をとらえていた。


その目にはだんだんと妖しく輝く光が戻ってきていて。



「俺たちの間でも噂になってるぞ......傷を一瞬で治してくれるんだってな。ほら、治してくれよ。金は......後からいくらでもやる」


「......は、話してくれたら。あなたが捕まっているのには、何か訳がある。それを話してくだされば......話すって約束してくだされば、あたしはあなたを治します」


「......生意気に、取引なんぞ持ちかけやがって」



なんの罪で捕まっているのかは分からないけれど、拷問の具合から見て二刻以上は経っている。


少なくとも今まで、口を割っていないということになる。


一か八かだったし、この傷を自分が受けることになるのはすこし怖かった。


だけどそれよりも大切なものが、ここにあるから。



「隠してること全部話してくだされば......」



あたしはほほ笑んだ。




「どんな傷でも治してみせましょう」



薬箱にだって、化け物にだって。


喜んでなってみせる。