「僕の部屋が?」


「それもありますが、沖田さんと過ごす時間が」


何気ない話をしている時。


おすすめの甘味を一緒に食べている時。


沖田さんからすればきっとなんてないことであたしだけが思っているのかもしれないけど、安心することができた。



「誰かとこうやって雑談することも、今まではありませんでした。あたし、友達もいないし」


「そんな悲しいこと言うなよ」


「事実ですので。だから、もっと沖田さんと一緒にいたいんです」



新選組に来る前、町で見た百人一首の光景は今でも覚えている。


数人の子供たちが楽しそうに歌を詠んだり、札を探したり。


そうだ、沖田さんはあの歌の続きを知ってるかな。


君がため惜しからざりし命さへ……





「よく恥ずかしげもなくそんなこと言えるね」


今まで黙っていた沖田さんの顔はどこか不本意そうで。


あたしはまた、なにか余計なことを言ってしまったのだろうか。



「ごめんなさい」


「はい、もう僕の部屋に入ってきちゃダメだよ」