「……貴様が?」




じっと藍くんを見つめるお兄ちゃん。


藍くんは困ったように笑っていて。


そろそろ強引に連れ出さないと、と思ったその時。





「貴士くん、そろそろやめましょ?」




彼女さんの愛美さんが優しくお兄ちゃんに声を掛けた。


その瞬間、お兄ちゃんは藍くんからパッと目を離し、すんなりと愛美さんへ振り返ったのだ。




「ああ、そうだな。悪かった」


「じゃあね、たまちゃん。ネックレスありがとうね」




愛美さんはふんわりとした笑顔を見せてくれたあと、お兄ちゃんを連れて店の外へ行ってしまった。



……さすが愛美さん。

あの暴走したお兄ちゃんを一言で落ち着かせてしまうなんて。





「……あ、ごめんね皆!とんだご迷惑を……。
藍くんもほんとにごめんね」


「全然いいよ、お兄さんに悪い印象与えてないといいけどね」


「だから君達2人の会話はもうカップルのそれなんだって!」


「あーもー、カツはうるさいんだってば。面白がって2人を茶化さないの」




優しい藍くんは爽やかな笑顔を見せてくれて、桃ちゃんは騒ぐカツくんを再び抑えてくれる。


佐賀くんは呆然と立ち尽くし、状況を上手く飲み込めていなさそうだ。




……まさか午前中に知り合いがこんなに集まっちゃうなんて。


忙しいというか大変というか。


でもようやくなんとか仕事が回りそうだ。