「あの綺麗な女装店員さんの名前ってなんて言うんですか?」




そう言って目を向けた先は佐賀くんだった。


……え、名前?




「佐賀くんです」


「〝サガくん〟って言うんですかぁ!素敵〜!」

「すごく綺麗だよね〜!」




女の子2人組はそう興奮気味に話している。


おお、やっぱり佐賀くん人気だよ……!

これはミスターコンも期待だ!



ミスコンもミスターコンも楽しみだなぁ。



そう思いながら裏へ入ると、今度は藍くん達のテーブルの料理が出来上がっていた。

それをおぼんに乗せて彼らのテーブルへ運びに行く。

佐賀くんは未だにカツくん達に捕まっていた。




「お待たせ致しました、パンケーキとオレンジジュースとカフェオレでございます」


「あ、成瀬さん……っ」




複数の料理や飲み物をテーブルに置いていると、立ち尽くす佐賀くんが弱々しい声を上げた。

佐賀くんの顔を見ると、助けを求めるようにこちらを見つめていて。


余程恥ずかしいんだろうなと思った。




「珠姫ちゃん、佐賀くん捕まえちゃってごめんね」



羽水くんが申し訳なさそうに言ってくれる。

やっぱりこういう時に気を遣ってくれる羽水くんはさすがだなぁ。


でも桃ちゃんもカツくんも、佐賀くんがこうやって目立ててることが嬉しいんだろうな。

佐賀くんの魅力が知られて、私も嬉しいもん。





「珠姫」





と、不意に聞こえた低い声。


教室のドアへゆっくり目を向けると、そこにはなんとお兄ちゃんが立っていた。