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「桃が珠姫にデザインまとめろって言い出したの意外だったよなぁ」




畳まれたダンボールを抱えて呟いたのは沙羅だった。

同じくダンボールを抱えて隣を歩く桃は沙羅を一瞥した。




「珠姫に無理させるようなこと、桃なら任せてこなかったのにな」


「まあね。たまに心から文化祭を楽しんでもらいたくて、任してみたの」


「いつも皆を陰で支えるばっかりだった珠姫に、自信を持たせる為なんだろ」


「……沙羅も分かってたんじゃん」


「お前の考えることくらい少しは分かるっつの。珠姫だってちょっと気付いてるだろ」


「……そっか」




きゃっきゃと笑い合いながら女子数人が沙羅と桃の横を通り過ぎていく。

どこのクラスも文化祭準備の仕上げにかかっているらしい。


目前に迫った文化祭が楽しみで仕方がない様子だ。




「たまのデザインセンスも好きだし。
もっと皆と交流を深めて欲しいってのもある」


「珠姫の同中誰もいないからなー」


「そうなんだよね。私はいいけど、たまの為には関わり合いを増やした方が絶対良いと思う」


「ま、カツや羽水とも仲良くなれて珠姫も楽しそうだし、確かに良いのかもな」



2人は少しだけ顔を見合わせて笑った。