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「珠姫」




1階へ下りてきたところで、リビングから私を呼ぶ声がした。


ひょっこりリビングに顔を出してみると、テーブルに座ってプリンを食べながらこちらを見てくる1人の人物。


私のお兄ちゃんである。



ちなみに名前は貴士(きし)って言います。





「今起きたのか」


「うん、おはようお兄ちゃん」


「おはよう。今日は暇か?」




表情を変えず、じっとこちらを見つめるお兄ちゃん。

私は「暇だよ」と頷いて、お兄ちゃんの向かいの椅子に腰を下ろした。




お兄ちゃんは落ち着いていて、クールなタイプだ。

表情はほとんど変わらないけど、根は優しくて紳士的な一面もある。


ちなみに彼女もいます。




「今日は付き合って欲しい所がある」


「……え?どこに?」


「買い物」




至って真剣にそうに話すお兄ちゃんに、私はぽかんとしてしまう。


買い物……?

なんで私まで一緒に?




「いいけど、何買うの?」


「彼女にネックレスを買いたいんだ」




プリンの最後の一口を頬張って、冷静に言葉を続けるお兄ちゃん。




「珠姫と彼女の趣味が合うみたいだし、その方が喜ばれそうだろ」


「……へぇ!優しいねぇ」


「珠姫も欲しいか?」


「え、いや大丈夫!ありがとうっ」




慌てて断る私を見て、少しだけ残念そうに「そうか」と呟くお兄ちゃん。