「ありがと皆」
「今回はあたしらが割り込んだ形だったからな。礼を言うのはこっちだわ」
藍くんと私を交互に見て話す沙羅ちゃん。
私はそこでやっと状況を理解した。
これは……私と藍くんを2人っきりにさせるという皆の気遣いか!
今回は私と藍くんが勉強会に誘ったから、せめて最後は2人きりにっていう。
皆……なんて優しいんだ!
「え、じゃあ俺もまだ羽水のノート写したい!」
「け・い・ご、テメェはどこまで空気読めねぇんだよ!ノートくらい自分でまとめろ!」
「えぇ、なんで足立そんな怒ってんの!?」
「はいはーい、もういいから私達は帰りましょー」
帰り支度を済ませた皆は桃ちゃんに押されながら、ぞろぞろと藍くんの部屋から出て行った。
帰り際に桃ちゃんが「お見送りは大丈夫だから」と笑ってくれて。
バタンと扉が閉められた。
「……」
「……一気に静かになったね」
静まり返った藍くんの部屋。
ぽりぽりと指で顔を掻く藍くん。
私は何も言わずこくこくと頷いた。
……ど、
どうしよう。
なんか一気に緊張してきた。
今……藍くんの部屋で2人っきりだ。
そして私と藍くんは……恋人同士で。
…………し、心臓がどんどんうるさくなってきた。
「敬吾ってほんとに鈍感だよね」
「……た、確かに」
「まあそんな純粋なとこが敬吾の魅力だったりするんだろうね」
あはは、と爽やかな笑顔を見せる藍くん。
そしてノートとワークを開いて勉強を始めだした。

