「そんなことないよ!佐賀くんみたいな優しい人に好かれて、嬉しくないわけないっ」
佐賀くんモテるし、かっこいいし、素敵だし。
もっと自信ついて、明るくなって皆とたくさん話すようになったら……きっと怖いもの無しだよ。
人気爆発する。
「……」
「……嘘じゃないよ?」
私が佐賀くんの顔を覗き込むように動いた瞬間、
佐賀くんはやっと顔を上げてくれた。
少し頬の赤い佐賀くん。
ゆっくり私に視線を合わせる。
「……成瀬さんも?」
「…………へ?」
「僕に好かれたとして……成瀬さんも嬉しいって思ってくれる?」
隣に座る佐賀くんは、じっと真っ直ぐ私を見つめている。
周りの音も何も聞こえなくなるような、時間の止まった感覚に襲われた。
……なんでだろう。
普通に答えたらいい質問だと思うんだけど、
なぜか……そう出来なかった。
空気がいつもより違って……、
あの階段や教室の時のような不思議な空気感。
「……あ、えっと……うん、嬉しい……よ」
「おーい佐賀。先生が一旦美術室戻れってさ」
私の言葉に被るように聞こえた声。
振り返ると、美術部の人らしき生徒がこちらに向かって口を開いているのが見えた。
佐賀くんは彼に「分かりました」と反応して、スケッチブックや鉛筆を片付けだす。
「ごめん成瀬さん……僕行くね……」
「あ……うん、また明日っ」
「……また明日」
そうして佐賀くんは立ち上がって美術室へ向かって行った。
残された私は、しばらく佐賀くんの背中を見送って。
ハッとしてスマホで時間を確認した。
もうそろそろ委員会終わるんじゃ……!

