私と藍くんが付き合ったという噂は、告白逃亡の噂もあった為、あっという間に生徒の間で広がった。
応援してくれる人は多かったけど、もちろん「なにそれ」と批判する人もいないわけではなかった。
でもそれは私のせいだし、批判する人を責めることは出来ない。
……私はこれから、藍くんが傷つかないように頑張らないと。
それで皆が認めてくれるかは分からないけど、今はそれくらいしか思いつかない。
「その後どーよ?」
優雅に足を組んで私の顔を覗き込む沙羅ちゃん。
にやりと上がった口角からして、きっと私と藍くんの状況を聞いているんだと察することが出来た。
「い、一緒に帰るようになった!」
「それは知ってるっちゅーに。イチャイチャはしてんのかって聞いてんの」
い、イチャイチャって……!
恥ずかしいよ沙羅ちゃんっ。
「……何もないよっ。あ、昨日手は繋いだよ!」
「……」
なんだそれ、と言いたげな沙羅ちゃんの表情に私は目を逸らす。
だって……初めて付き合ったんだもん。
どうすればいいかとか、普通がどうとか分かんない。
でも、手を繋いだのもすごくドキドキしたんだけどなぁ。
――『ねぇ珠姫ちゃん』
『うん?』
『手とか繋ぎたいんだけど、いい?』
『……!は、はいっ』
『あはは、良かった。珠姫ちゃんの手小さくて可愛い』
『か、かわ……!?
藍くんの手もゴツゴツしてて……かっこいい!』
『ぷっ、あははは。そんな風にはっきり言われたの初めてだ。ありがとう』――
思い出すと自然とにやけそうになる。
藍くんの笑顔が素敵で、いっつも見とれてしまって。
こんなにドキドキしてるのは私だけなんだろうなぁ。