「珠姫、ほら」



両手を広げた沙羅ちゃんが、私に近寄った。

私はそんな沙羅ちゃんの優しさに、また泣いてしまう。


すると沙羅ちゃんは自分から私のことを抱き締めてくれたのだ。


あったかくて落ち着く。

でも、今はその温かさが涙腺を崩壊してくる。



……駄目だ、泣き止めない。




「大丈夫だから気にしないで。バイバイ」



懐の外からは桃ちゃんの声が聞こえる。


きっと泣いてる私に気付いた生徒に声を掛けてくれてるんだろう。


……周りに人もいたのに、教室のど真ん中で泣いちゃう自分が嫌だ。




「……珠姫」


「……うん?」


「なんか……勝手にこっちもガンガンいけとか言っちゃって悪かったなぁって」


「……っ!」



私は驚いて沙羅ちゃんの懐から顔を上げる。


沙羅ちゃんは少し困ったように笑っていて、優しく私の頭を撫でてくれた。




「珠姫の為になればいいと思って、何かと引っ付けようとして……珠姫にとってはいい迷惑っつーか」


「ち、違うっ」



声を張ってみるが、鼻が詰まっている為か上手く声が出なかった。


でも、必死でぶんぶんと首を振って主張する。



違う。

違うよ沙羅ちゃん。


沙羅ちゃんが謝ることなんて何も無いのに。




「沙羅ちゃん達のおかげで私、藍くんに対する気持ちに気付けたんだよ。

……私、藍くんに拒否反応が出たとかじゃないの……っ」



鼻水が次々と流れてくる。

涙もぽろぽろと止まらない。


喋ると上手く息ができなくて、何度も何度も嗚咽をもらす。



沙羅ちゃんと桃ちゃんは顔を見合わせて、少し呆然としていた。