*   *   *




「――だろうな」




目の前に座るカツは、少しにやけて椅子の背もたれに体を預けた。



カツが日誌を書き終わる頃には、既に教室は俺達以外無人だった。


廊下からは微かな話し声、外からは部活の掛け声や吹奏楽部の楽器音が、静かな教室に聞こえてくる。



昼休みに村本に告白されたことをカツに話してみたけど、あまり驚かれなかった。

きっと察していたんだろう。




「あんな風に呼び出されたら予測もつくだろ」


「まあね。……でも、断った」




俺の言葉に、カツはぴたりと動きを止める。


あ、これは驚いた?




「断ったって……初めてじゃね?フリーなのに断るの」


「そうだね」


「それは……どういう理由で?」




食い気味なカツに、俺は少しだけ笑う。



どういう理由……かぁ。


正直なんて言ったらいいか、俺もよく分かってないんだよね。





「とりあえず付き合う……っていうのをやめたんだ」


「なんで?」


「だって……結局相手を傷付ける結果になるし、俺はこのままじゃ変われないなって思って」




……初めからやめとけば良かったんだよ。


やり方が間違ってるって……早く気付けば良かった。