「珠姫」
敬吾くん達が話している間に、沙羅ちゃんが私だけに聞こえる声で話しかけてきた。
振り向くと、じとーっとこちらを見つめる沙羅ちゃんが。
「ど、どうしたの?」
「なんか考え事か?今日よくぼーっとしてんぞ」
す、鋭い。
さすが沙羅ちゃんだ……。
でも、これは話さない方がいい気がする。
きっと話したら、「そんなの珠姫が心配することじゃねーよ」って言ってくれそう。
確かに、藍くんのこと好きな女の子に気を遣って、私が藍くんから距離を置くなんて……お節介過ぎるのかもしれない。
……でも、私は少しでも藍くんの力になりたい。
今はこのくらいしか思いつかないんだ。
「えーっと……あ、そうだ。今回のコンテストの投票に沙羅ちゃんの名前があったらしいよ」
「……は!?」
私は咄嗟に、さっき桃ちゃんから聞いた情報を使って話を逸らした。
沙羅ちゃんは眉間にシワを寄せて驚いている。
よし、上手く逸らせた。

