しばらく、そんな風に廊下で対峙したのち──
「……心菜にできんの……」
ぶっきらぼうな言葉だったけど。
久しぶりにちゃんと目を見てくれた。
久しぶりに名前を呼んでくれた。
今まで当たり前だったそれだけのことに、胸が高鳴る。
「……中野も倒れるくらいだぞ」
「…………うんっ」
あたしは強い意志を持ち、怜央くんの瞳を見つめて頷いた。
もともとは、あたしの仕事だった。
倒れたってなんだって、頑張れる自信がある。
すると、あたしを見つめる怜央くんの頬がだんだん緩んで。
「たーっぷりこき使ってやるからな。覚悟しとけよ」
その瞳はもう冷たいものではなく、見慣れたいつもの怜央くんで。
あたしも顔がほころんだ。
「うんっ……!」



