その日の放課後。
「怜央くんっ……!」
委員に向かおうとしている怜央くんの背中に声を掛けた。
いつぶりだろう……怜央くんの名前を呼んだのは。
でも、いてもたってもいられなかったんだ。
足を止めて振り返った怜央くんは、一瞬ハッとしたように目を見開いたけど、すぐにスッと目を細めた。
明らかにあたしに対して不信感を持っている瞳。
でも……負けるものか。
「あの……すみれちゃんがお休みの間……あたしに委員の仕事手伝わせてもらえないかな……」
今更なんだよって言われるかもしれないけど。
あたしがそうしたいの。
廊下の真ん中で距離を保って立ち止まるあたしたちを、行きかう人たちが怪訝そうに見ている。
まさに怜央くんの瞳は"何を今更"そう物語っている。



