「じゃあまず、障害物競争に出たい人」
怜央くんがそういった途端、勢いよくいくつもの手が上がった。
やっぱりこれが一番人気らしい。
人数を数えるために、手を挙げた人を怜央くんが目で追っていく。
「お前足早いんだから徒競走に出ろよー」
時々突っ込みながらゆっくり目を動かして。そして、手を挙げているあたしとも視線がぶつかった。
けれど、サッと目をそらした怜央くんは。
「人数が定員より多いのでじゃんけんをしてもらいます」
何事もなかったかのように、進行していく。
チクリ。
小さい針で突き刺したような痛みを胸に覚えた。
今までなら目が合うと、意味もなく笑いかけてくれていたりしたのに。
あたしが委員を降りたこと、やっぱり怒ってるんだ。
責任感の強い怜央くん。
一度決めたことからあっさり手を引いたあたしのこと、軽蔑してるんだよね。
下を向いて唇をかむ。
気を緩めたら、涙が出てしまいそうだったから。
教卓で進行を務める怜央くんの声が、まるで知らない人の声のように聞こえた───



