「だから、これ……」
渡されたばかりの資料を怜央くんに返す。
「……りょーかい」
その一言は、なんだかとても冷たく聞こえた。
もしかして、怒ったかな。
面倒な委員を放棄して人に押し付けたと思ってる?
……思われても仕方ないよね。
怜央くんはそのまま体制を変え、反対方向を向いてしまう。
そして、さっきあたしに差し出した資料をすみれちゃんへ渡した。
「西野」
「あ、怜央くん」
「これ、実行委員の資料なんだけど」
すみれちゃんの顔は分かりやすく輝き始めて、怜央くんの話に一生懸命耳を傾ける。
ものすごく、自己嫌悪。
せっかくのチャンスを自ら手放してしまった。
創作した物語に頼ろうとした罰なんだろうか。
そんなに物事はうまくいかないよという、神のおぼし召し。
やっぱり、出会いも、席替えも……単なる偶然なのかな。
はしゃぐすみれちゃんの声を聞くあたしの心は、チクチクと痛んだ。



