「……俺を庇ったりしたから……そのせいで俺のことだけ忘れちまったんだと思ってた。このままずっと、俺のこと思い出してもらえなかったらどうしようかって毎日不安だった……」
怜央くん……。
不安にさせちゃってごめんね。
「忘れるわけ……ないよ……全部覚えてるよ……。初めて会った日のこと……自転車の後ろに乗せてくれたこと……ケガの手当てをしてくれたことも……」
「心菜……」
「告白してくれた日のことも、初めてもデートも……」
半信半疑でなかったと言えば嘘じゃない。
でも、全部全部。実際に起きたことだったんだ。
やり直しの世界で得た記憶でも、それ間違いなく怜央くんの記憶と同じもの。
それだけで、もう十分。
いつの間にか、凪咲ちゃんと大和くんは病室を出ていて。
「心菜、大好きだよ」
「あたしもだよ、怜央くん……」
あたしたちは見つめ合い、そっと、唇を重ねた。



