その事故だって、あたしには二つの記憶があるけど、怜央くんは風船を追いかけて行った方の記憶しかないんだよね?
自分でも、いまだによく整理ができてない。
「俺をかばって車にひかれるなんて……っ……俺、もうどうしたらいいかっ……」
続きは言葉にならなかった。
目を真っ赤にしながら歯を食いしばる。
あの時……あたしは怜央くんを庇ってひかれたの?
ということは、今回の怜央くんはほとんど傷を負わなかったの……?
だんだんと状況が飲み込めてきた。
ああ……。
未来は変わったんだ。
未来を……変えることができたんだ。
「怜央くんっ!」
あたしはもう一度、その体を強く抱きしめた。
「ありがとう、俺のこと思い出してくれて……」
「……当たり前だよ……こんなに好きなんだから」
懐かしい温もり、匂い。
"現実"のものだと思ったら、さらに愛おしい。



