「俺のこと、思い出してくれたの……?」



瞬間、怜央くんがあたしに向かって走ってくるから。


両手を広げて抱きしめてくれるその胸に体を預けた。


きつく、きつく抱きしめられる体。



「怜央くんっ……ほんとにここにいるの?」



本物?

確かめるように、怜央くんの頬に両手で触れた。



「いるよ。俺はいつだって心菜のそばにいるよ」



怜央くんの瞳からあふれ出る涙。



「……っ……怜央くんは……ケガ、してないの……?」



あたしは見た感じ重症だけれど、怜央くんは包帯ひとつ巻いてない。


一度目は、亡くなるくらいのケガを負っていたのに。



「事故のこと、思い出したの……?」



そうだ。

きっと、この世界で昨日までのあたしは、事故のことだって覚えてなかったはず。



「うん」