記憶をなくしていた時だって、怜央くんが死んだなんて誰も一言も教えてくれてなかった。
あたしの経過を見て、退院したら……お墓の前に連れて行くつもりなんでしょ……?
「だめだよ……そんなのじゃ……あたしはっ……怜央くんに会いたいのっ……」
ワガママを言っているのはわかってる。
無理なのもわかってる。
でも、でも……。
「心菜どうしたの?落ち着いて───」
「嘘つかないでいいよ。怜央くんは……怜央くんは……」
その時、病室のドアが開いた。
「いやー、参った。売店混んでてさー」
そう言いながら入ってきたのは、背の高い男の子。
ドクンッ───と胸が大きく音を立てた。
その声、その瞳は。
「怜央、くん……?」
あたしが呼びかけると、彼は持っていた売店の袋をどさっと床に落とした。
「心菜……?」
あたしをまっすぐに見つめる瞳。
驚きで思い切り見開かれたその瞳。



