いつの間にかふたりの修羅場になってしまい、あたしは口をはさめずその様子を見守った。
ピリピリと張り詰めた空気が纏う。
ジッとそんなすみれちゃんを見つめていた藤谷さんは。
「……勝手にしなさいよっ……」
強く言い放つと、身を翻して昇降口の方へ行ってしまった。
バンッ!と激しく靴を玄関に下ろす音が聞こえた。
続けてわざとらしく立てた大きな足音……それはやがて聞こえなくなった。
ふたり残された少し薄暗い廊下の隅。
「……心菜ちゃん、本当にごめんなさい……」
涙を流したまま、すみれちゃんがあたしに頭を下げてきた。
すみれちゃんは、本当は苦しかったんだ。
「……ううん……謝らないで」
すみれちゃんは悪くない。
むしろ、あたしはすみれちゃんに助けられてしまった。



