ひどい。そんなこと言うなんて。
違うじゃない。
全部、藤谷さんのお兄さんの指示を受けてやってることなんでしょ?教師として失格な行為を……。
「……はい」
ごめんなさい、怜央くん……。
素直に返事をする怜央くんをもう見ていられなかった。
視線をそらすと凪咲ちゃんが視界に入った。
凪咲ちゃんは凪咲ちゃんで、授業に集中しておらず黒板じゃないところに目を向けている。
その視線をたどれば……大和くん。
『生まれ変わったら……大和とつき合うかって言ったらないかも』
そんなの嘘だ。
凪咲ちゃんは心から大和くんが好きなはず。
そもそも浮気なんてしていなくて、藤谷さんが仕組んだ策略。
そんなものでふたりの仲がおかしくなってしまったなんて。
涙が溢れそうで、グッと唇をかみしめる。
あたしが泣く資格なんてない。
噛みしめた唇からは、血の味がした。



