移動教室、購買に飲み物を買いに行くときなど、常に周りをキョロキョロしてしまう。
けれど今となっては、あれだけ感じていた視線を全く感じなくなってしまっていた。
「心菜、どうしたの?」
「えっ、ああ」
あまりに周りばかり見ているから、凪咲ちゃんにも不審がられてしまった。
学年もクラスも分からず、彼を捜すのは困難を極めていた。
───再び彼が現れたのは、考えすぎて頭がパンクしそうになった頃。
放課後、ひとりで図書室に借りた本を返しに行ったとき、ばったり遭遇したのだ。
この間と同じように、少し冷たい目。
でも、その瞳に出会えたことに今日はホッとさえしてしまう。
彼も、その瞳にあたしを映しても今日は逃げなかった。
「あの……あたしは現実の世界に戻れないの?」
すがるように彼に問う。
あたしが現実の世界に戻れる鍵を握っているのは、きっと彼だけ。



