───ドキッ。
「はい、これで良し」
「あ、ありがと……」
優しくて、大好きな彼。
なのに、どうしてあたしは怜央くんを忘れてしまったんだろう。
こんなに……好きなのに。
病院で見た、怜央くんの表情が頭から離れられない。
寂しいなんて口には出さず、いつも笑顔でいてくれたけど。
今思い返せば、顔で笑って心で泣いていたんだよね?
ねえ、そうでしょ?
現実の世界であたしは……怜央くんを悲しませているんだ。
そう思ったら胸が痛くてたまらない。
「どーした?」
「え……」
リボンに触れたまま、覗きこむように顔を近づけられ、ハッとする。
吐息が触れ合うくらいの距離。
相変わらず綺麗で整った顔は、初めて会った時とおなじで何度見てもドキドキする。