「おはよ、心菜」
朝。
教室で怜央くんに声を掛けられて、あたしはビクッと肩が上がってしまった。
「どうしたの?」
「……っ、なんでもないっ……おはよっ」
上手くその顔が見れずに、あたしは鞄を机に置くと、教科書をしまう。
やり直しの世界だと知って過ごす時間は、昨日までとは同じになんて行かなくて。
見るものすべてが、違って見えた。
今日はみんなにとってこれから始まる1日だけど、あたしは違う。
すでに経験したことのある日なんだ。
さらに、もうすぐ来る未来に、あたしは交通事故にあって怜央くんの記憶を失ってしまう。
そう思ったら、今までみたいに過ごせるわけなんかない。
ふいに、怜央くんの手が伸びてきてドキッとした。
「曲がってる」
その手は、あたしの胸元のリボンへと。