「いいよ、気にしないで」



今日も優しいまなざしであたしを見つめる彼は、目覚めた日からずっとそう言い続けてくれている。


……でも。


忘れてしまったのは、彼のことだけ。


家族や、凪咲ちゃんや大和くんのことは覚えている。


でも2年生になってからの出来事はあいまいで……。


どんな時間を過ごしてきたのかがぽっかり抜け落ちてしまっている。


その中に、きっと彼と過ごした時間があるんだろうけど。


無理に思い出そうとすると、頭が痛くなって何も考えられなくなるんだ。



「毎日毎日来てもらって……ごめんなさい……」



彼は、毎日お見舞いに来てくれている。


きっと、あたしが意識不明の間も来てくれていたのだろう。


部活とか学校の勉強とかいろいろと大変なはずなのに。