日の傾いた校舎の周りは、一面黒い影で覆われ始めた。


風が吹きすさみ、足元では落ち葉がくるくると躍る。


ブレザーを羽織っているものの、ひんやりとした空気は体の熱を奪っていてく。


それでもあたしは動けずに、校舎の壁に背をつけて、ぼんやりと天を仰ぐ。



そうだよ。


思い出した。


あり得ないと思ったくせに、あたしの記憶がそうさせてくれない。


……思い出してしまったから。



本当のあたしは交通事故にあって、入院していることを。


そして。


怜央くんを忘れてしまったことも───



それが苦しくて、悔しくて、悲しくて。


怜央くんを思い出したい。


どんな出会いをして、どんな恋をしていたのか。


そんなことを強く思いすぎたせいで、説明のできない不思議な現象が起きたの───?