車通りの多い交差点。
あたしは何かから逃げるように走っていて。
その光景を知っている……漠然とそう思った。
なんなの、これは……。
呼吸が苦しくなって、あたしはその場にしゃがみ込んだ。
『──待って……!』
聞こえたその声は…………怜央くん……?
『キィーーーーーーーッ!!!』
響く車のクラクション。人々のざわめき声。
なに、これは、なに……?
ぐるぐると回る視界。
「うっ、あっ……はぁっ……」
ドクドクと全身の血液がものすごいスピードで体中を廻っていくのがわかる。
頭が割れるような痛みに襲われた瞬間、目の前に閃光が走った。
「……っ」
そうだ……。
あたしは……あの日……怜央くんから。
「思い出した?」
胸を押さえながら、彼をそろそろと見上げる。



