これから……起こること……。
顔を歪めながら覗いた細い視界からは、相変わらず表情を変えない彼が映る。
「身に覚え、ない?」
「……それは……っ」
言われてみれば。
知っているわけではないけど、小説に書いたことが実際に起きるようなことが何度かあった。
単なる偶然だと思っていたけど。
それは───
「君がすべて、一度体験したことだからだよ」
体験したこと?
じゃああたしは、知り得た未来を小説にしてたってこと?
いや、あたしは何をまともに受けているんだろう。
そんなことあるわけがない。
「思い出せない?事故のこと」
彼がそう言った途端。
頭の痛みが強さを増した。
ズキズキと奥の方まで突き刺してくる。
「うっ……」
ぎゅっときつく目を閉じると、真っ暗な脳裏にぼんやり浮かび上がる映像。



