「思い出せないなら教えてあげる。現実世界の君は今、交通事故に遭って病院に入院しているんだよ」


「ちょっ……」



なにを言ってるの?


あまりに突飛な言葉に口を挟んだけれど、彼は有無を言わせず先を続けた。



「君は記憶喪失になって、彼氏の記憶を失った」


「……っ」



淡々と告げるそれは、嘘だ、なんて笑い飛ばせるような内容じゃなくて。


自分の顔が固まっていくのがわかった。



「彼を思い出せない君は、ひどく苦しみ、どうしても思い出したいと願った。できることなら、もう一度すべてをやり直したいと」


「……」


「その思いが強くなったとき、君は、この世界に戻ってきたんだ」



……っ。


そのとき。


"あの頭痛"があたしを襲った。


思わず頭に手を当てて目をつむる。



「その証拠に、君はこれから起こることを知ってただろ?」