「僕のことじゃないよ」
「……え?」
「今君が体験していることすべて、だよ」
「……?」
なんの、話……?
あたしが体験しているすべて……って。
それを思いだすって、どういうこと?
「ここは、現実の世界なんかじゃない。君は、過ぎた世界をもう一度繰り返しているんだよ」
「……」
あまりに真面目な顔で突飛なことを言うものだから、言葉に詰まった。
からかうにしても、もう少し現実味のあることを言ってくれないと……。
自分で引き留めたくせに、やっぱり彼と関わるのは危ない気がして。
「あ……あたしやっぱり……」
直感なんて、何かの間違いだったんだ。
敢えて言うなら、危険だという直感の方が正しい。
そっとフェイドアウトしようとしたとき。
「信じるも信じないも君次第だけど」
それを許さなかったのは、投げるように放たれた一言。



