その背中に向かって声を掛けると、彼はピタッと足を止めた。
追いかけていたくせに、足を止められたら、またいい知れない悪寒が体中を襲う。
……なんなんだろう。この感覚は。
続けて声を掛けられずにいると、彼がゆっくり振り向いた。
やっぱりあのときの彼で間違いない。
冷たく尖っていたと思っていた瞳は意外にも大きくて、じっと見つめられると吸い込まれそうな威力を持っていた。
今日もゾクリと悪寒さえ感じるその瞳に、あたしは目を逸らす。
本当は、関わりたくなんかない。
けれど。
「あの……あたしに……なにか用ですか……?」
対峙してまで問いたかったのは、なぜか聞かなきゃいけない……そんな不思議な直感のせいでもあった。