えっと……。
「ああっ!!!」
「うわあっ」
あたしが大きな声を出したからか、彼が思いっきりビクッと肩を揺らした。
今、慎重に傷口を消毒してくれているところだったのに……。
「ご、ごめんなさいっ……」
大声にびっくりしたせいで、患部からはみ出たところに消毒液が流れてしまっていた。
それを慌てて拭いてくれる彼。
「いや、大丈夫だけど、どうしたの?」
「あ、ちょっと……」
まってまって。
これって……。
あたしが小説で書いたシーンに似てるんだ。
似てる、というよりも、そのまま……。
始業式にヒロインが遅刻して走って学校へ向かっていたら、自転車に乗ったイケメンヒーローとぶつかって(今回はぶつかってはいないけど)一緒に保健室に行って、傷の手当てをしてくれた……。
思わず背中がゾクっとした。



