「疲れちゃったな、なんて」



弱々しい声。


机の上に広げたハンカチを畳んだり広げたりしながら。


こんなネガティブな凪咲ちゃんを見るのは初めてで戸惑う。


恋愛経験の乏しいあたしがかけてあげられる言葉なんて見つからない。



「そっか」



あたしに出来るのは寄り添うだけ。


力なくつぶやいた凪咲ちゃんの肩に手を置いて……少し力を込めた。



「なーんかさ、大和が信じられなくなっちゃったんだよね」


「……うん」


「所詮他人だもんね。信じてる、なんて言葉は、自分を安心させるためだけで結局はなんの効力もないんだよ」



本当にどうしたんだろう。


少し喧嘩したというレベルではなさそうな発言に、あたしの胸も落ち着かない。


ふたりが別れの危機にあるとしたら、世の中のカップルだって危うい。


それくらい、お互いを想っているのが傍目にもわかるお手本のようなカップルだった。