フワッ。



「……しばらくこうさせて」



すると突然、怜央くんが背後からあたしを抱きすくめた。


さっきよりも、力の入った手で。



「……うん」



どこか頼りない声。


怜央くんは、きっとつらいはず。


明るく振舞っていても、どこかで気持ちの糸が途切れるときがある。


あたしの前では、それを見せていいよ……。



「怜央くん」


「……ん?」



少し掠れた声で反応する怜央くん。



「あたしは、どんな怜央くんでも好きだよ」



どんな言葉が口から出てくるなんて考えずに出した言葉は、心の底からの想い。


あたしはただ、怜央くんが好き。



「ありがとう……」



一言呟いた怜央くんは、もっとぎゅっとあたしを抱きしめた。


あたしは無言で、そんな彼の手の上に自分の手をそっと重ねた。